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丹後

300年に渡り、その繊細な美しさと上質な技術で日本の着物文化を彩り続けてきた「丹後ちりめん」。豊富で高品質な水と年間を通じて適度な湿度を保つ気候に恵まれているため、絹が乾燥しすぎず、る際に切れることが少ない。水、気候、そして蓄積された職人技。これらの好条件が結びつき、日本が誇る最高級の絹織物が生み出される。

薄暗いしっとりとした空間の中で、
水がしとしとと糸を濡らし、
ブンブンと撚糸機が風車のように回る。
水をほとばしらせ糸がぐるぐると旋回する。
糸が生きている、と思う。

丹後ちりめんの特徴である「シボ」と呼ばれる凹凸。それを生み出すのが、水を注ぎながら糸にりをかける機具・八丁撚糸機。現役で稼働し、支える職人たちを今なお有する工場は数少ない。そんな稀少な存在のひとつ、1833年創業・現在6代目が運営する株式会社山藤。こちらが手掛ける「一越ひとこしちりめん」を、SaboraMiのドレスで使用している。生地を先に織り上げてから精錬を行う“後練り”という手法により、滑らかで美しい落ち感を持つのが特徴だ。

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水を生糸に垂らしながら、八丁撚糸機で撚糸している様子。本来は和装独特の技術なのだとか。

そもそもちりめんとは、縦糸たていとと生糸を強くった緯糸よこいとを交互に織り込み(=撚糸ねんし)、精錬という不純物を取り除く作業によって表面にシボが生まれる白く美しい絹織物のこと。丹後ちりめんの緯糸には強い撚りがかけられており、精錬作業で糸が収縮、縦糸の撚りが戻ろうとする力で、細かな凹凸状のシボが生まれる。

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山藤のジャカード織機。りの異なる5種類もの糸を使用するというSaboraMiのドレス生地を、丁寧に織り上げていく。

紋紙(=生地を織るために用いられる型紙)が揺れて、正確なリズムでシャトルが行き来する。糸の時点ですでに完成された美しさは圧巻。絹糸は、光を当てると8から9色の光を発するそうだが、合繊であるレーヨンはどんなに品質が良くとも6色。その優しい光沢もまた、多くの人がシルクという天然繊維に魅了される理由でもある。

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